私は昨日、確かに伝えた。
「13:25には発車するから、それまでにN駅ね」と。


それにしては遅い。

告白した時の事を思い出したり、髪型や服装を気にしたり、もう何度目になるだろう。




窓に映った不安げな私の顔と目が合った時、駅内放送が列車の到着を告げる。


このままだとせっかくのデートが台なしだ。
どうしてくれんだ優司!




そう、今日は念願の優司くんとデートの日。

昨日から心拍数が上がりまくって、遠足前夜の小学生みたいだった。
そんなこと、優司には口が裂けても言わない。



優司はお察しの通り、遅刻魔だ。

昨日もそれが1番心配だと、本人も言っていた。


私は自転車置場に目をやった。優司は自転車でくるはずだ。


あと3分で、
列車は発車する――。



「もう、間に合わないかなぁ」


はぁ、と顔を下げた時だ。


「間に合ったじゃん」


え?


「よっ」

「よじゃねぇ。とりあえず切符買ってこい!」



頭を上げると、優司が何食わぬ顔でこちらを見ていた。

その顔が無償に腹立たしかったので、後押しするように背中を押した。

切符を買う優司の後ろ姿を見て、「息切れくらいしろよ」と小さく呟く。



本当は、

来ないんじゃないかって不安だったくせに
会えて嬉しいくせに

素直に言えない自分の方が
無償に腹立たしかった。