喋りかけないで。
とんでもない…。


彩ちゃんがどれだけ傷ついたか。
なんであんたは信じてあげられなかった…?!


クラスメイトなら
庇ってあげるのが普通でしょ。


酷いよ…。


「緊張?!
 …何言ってんの。」


いつもなら
普通に応答するけど
今はいつも、じゃない。


今は…戦いの時期。


「え?
 …じゃあ普通にドア開けるだろ。」


「そうだね、
 普通に開けるよ。」


そう言って自然に
ドアに当てていた手を
動かしていた。


緊張のかけらなんて
どこにもなくなっていて。
ただ、この男子に
口で負けるなんて嫌だって思った。


みんながこっちを一斉に
向くのが分かった。


…そして、気味の悪いことに
みんなクスクスと
私のことを見て
笑い始めたのだ。