「彩が美羽の悪口言ってるって…。」


「…っ?!」


彩ちゃんが息を呑んだ。
細い両手を口の周りに覆い、
こっちをじっと見た。


「…まさか…それ…信じて…?!」


「信じてないよ!
 まさかそんなことないと…。」


彩ちゃんはもう聞いてなんかいなかった。
解けかけていたマフラーを
キツく巻きなおすと、
ベンチの前に置いてある通学カバンを
掴み取った。
ベンチからそして腰を浮かした。


えっ…?


帰っちゃうの…?


「信じて…ない…よね?」


もう一回絞り出すような声で
言い切ると、彼女は公園の
入り口を走って出て行った。


彩ちゃん…。


私…信じてないよ…。
だから彩ちゃんも私のこと
信じてよ…。


彩ちゃんが私の悪口言うなんて
全然信じないよ。


だって彩ちゃんは私の親友でしょ?


だから私は彩ちゃんを信じた。
彩ちゃんも私のこと、親友だと
言ってくれたでしょ?


だから私のこと、信じてよ───