『やーい、やーい!お前んとこのひな人形、毎年サイテーな顔してんやがんの!』

『そーだ、そーだ!着てる着物もみすぼらしいったらねぇよな!』





毎年のこの時期、ひな祭りの時期になると、あたしには思い出すことが2つある。


それは、苦くて悔しい思い出と、ひなあられのように甘い思い出。


1つは、あたしがまだ幼稚園の年長組だった頃、近所の小学生の男の子たちに毎年のようにひな人形をバカにされていたこと。


体の弱かったおばあちゃんが、布団の中で半年以上もかけてコツコツ作ってくれた、手作りのひな人形。


あたしにとってはすごく大切で、どんな豪華なひな人形よりもキレイだった、おばあちゃんの愛が詰まったひな人形。


それを、その男の子たちは、どれほど重みがあるのかも考えることなく見下していた。


幼心ゆえに、からかいたかったとか、それこそ悪気のないことだったのかもしれない。


だけどあたしには、あまりに残酷すぎた。大好きなおばあちゃんの愛を踏みにじられた気分で、悔し涙がこぼれたんだ。