そう声を掛けると父親は振り向きしぃちゃんに目をやった。
「おーおー、よー帰っち来たのぅ」

(*^^)
「お父さん、しぃです。はじめまして、よろしくお願いします」

頭を下げるしぃちゃんに、
「こら別嬪さんじゃ。よー来た、よー来た」
と嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

「じゃけんど、今忙しいから家で待っちょけや。夕方には帰るから」

(*^^)
「お父さん、あたしにも何か手伝わせて下さい。何も出来ませんけど、料理だけは得意なんです」

しぃちゃんは既にゴム長とエプロンで戦闘準備万端と言った出で立ちで父親に言う。

「良い、良い。家でゆっくりしときよ」

(´・ω・`)
「お父さん、しぃちゃん何でも出来ますから手伝わせてやって下さい。その為に来たようなもんですから」

父親はちょっと不思議な顔をした後、「じゃあ、こいつを三枚にオロシち」と小降りな鯛を差し出した。

しぃちゃんはそれを完璧なまでに三枚にオロシてゆく。

父親は驚いたような顔でしぃちゃんを見ると関心したように頷いた。

「こら良い嫁さんが来たもんじゃ」

そう言ってまた笑った。




徐々に息の合ってきた二人をしばらく見ていたが、これと言って何も出来ない僕は「ちょっと浜に行ってきます」と声を掛け、水槽小屋を出て行った。

水槽小屋の目の前には豊後水道が広がっている。
狭い入江にちょこんと突き出た堤防を海の方へ歩いて行った。

お昼時の砂浜は静かだった。波の音が耳に心地良い。
もうしばらくもすれば近所の子供達が波と戯れに出てくるだろう。
それまでここは僕のプライベートビーチだ。
大きく息を吸い込み潮風のご馳走を満喫する。

僕はしばらくの間、堤防に腰掛け海を眺めていた。
海面に反射する太陽のキラキラやウミネコ達との会話を楽しんだ。