もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜


母親が亡くなってからと言うものの、まともに話をする事も無くなってしまっていた父親。だが今回ばかりはそう言う訳にはいかないだろう。

(´・ω・`)
「急で悪いんだけど、お盆帰れる事になったから。うん、彼女も一緒に」

夜遅くに悪いとは思ったが、日数的に余裕が無かった為に電話でそう話すと、『諦めていた朗報』に父親は手放しで喜んだ。


8月12日(月)晴 10:00 Kickoff

第1戦 しぃちゃん−父親 実家


良く晴れた真夏の朝早くに僕はしぃちゃんの実家を尋ねていた。

しぃちゃんのお父さんの位牌に手を合わせ「行ってきます」と報告をする。

見送りをしてくれたしぃちゃんのお母さからは「くれぐれも――」と念を押された。
そして僕の背中をパンパンと両手で叩いた。



行きの車中では普段となんら変わらなかったしぃちゃんも実家に近付くにつれ段々と無口になっていった。

(´・ω・`)
「心配ですか?」

(*^^)
「うん、そりゃね・・」

そう話す声も細くなっていく。

(´・ω・`)
「大丈夫ですよ。しぃちゃんなら」

(*^^)
「うん、あたしお魚大好きでしょ?お父さんのところは新鮮なお魚が沢山あってすっごい楽しみなんだけど、今日食べられるかなぁ?」

(´・ω・`)
(そっちの心配か!)

僕は危うくハンドルを取られそうになる。

(*^^)
「冗談だよ、冗談。気に入ってくれるかなぁ・・」





そんなこんなで実家へ――。

実家には誰もいない。いや、それは分かっていた事だ。
お盆の魚屋は掻き入れ時だ。一般の魚屋とはちょっと違うが、その辺は同じだった。
近くの旅館や小料理屋に卸す魚の下ごしらえで忙しさを極めている事だろう。

僕らは実家に荷物を下ろすと、その足で水槽小屋へと向かった。
歩いて3分の小さな水槽小屋。

商店を構えていない父親のお店はニ槽の生け簀と調理場を備えただけのとてもシンプルな物だ。

波形トタンの扉を引いて中に入る。
そこにはいつもの様に魚と格闘している父親の姿があった。
いつもと違うのは、その魚の量だった。

(´・ω・`)
「お父さん、今帰りました」