「へぇ、僕は何にも感じなかったよ。”ご両親はお元気ですか?”って声をかけられたけど。」 「そう…。」 軽く頷きながら松浦は何気なく腕時計に目を移したが驚いたように眉を吊り上げた。 「あっ、もうこんな時間。朝食の準備を手伝わないと!」 そう言うと彼女はスタスタと緩い傾斜の林道を下り始めた。 「あっ、待ってよ!」 僕は慌てて彼女の後に続いた。 ツン…。 冷えた空気に鼻の奥がチクリと痛み、僕はフルフルと小刻みに身震いをした。