「皆さん初めまして、柴山拓人です。」 緊張した面持ちで突っ立っている僕達に向かって、彼はにっこり微笑みながら会釈をした。 ヒョロリとした体、短い髪に無精ひげ…頭には大きな麦わら帽子。 そして、Tシャツから伸びた腕は以外と逞しく日に焼けていた。 目の前に立つ柴山拓人は、僕らが想像していた「世界的なバイオリニスト」というイメージとは全く違っていた。