美瑛までは途中まで高速を使い、富良野からは一般道の移動となる。
これから快調にとばしていっても、到着はお昼過ぎになることだろう。

僕は後ろの座席の窓側に座っている碧海を見た。
合宿が決まってから、彼はずっと機嫌がいい。
今も、稀に見る穏やかな表情で外の景色を眺めながらMDプレーヤーの音楽を聴いている。
僕の視線を感じた碧海は、耳からイヤホンを外しこちらを向くと”何か用?”とでも言いたげに額にかかる前髪を長い指でかきあげ、眉を軽くひそめた。


「用はないんだけど…“いつも何を聞いてるのかなぁ。”なんて思ってさ。」

僕は碧海の顔色を窺いながら、遠慮がちに尋ねた。


「教えな~い。これは俺のお守りだからね。誰かに聞かせたりすると効力が無くなる。」

そういって碧海はニヤリと笑い、再び視線を窓の外に移した。