…時が、止まったように見えた。


こんな経験、したことない。


「え…………。」


目の前にいたのに。


『いない』


「……っ!
う、うさたん!?」


辺りを見回しても、
ウサギの姿はなかった。


が―――…。


「よぉ!岬。」


沙弥はビクッとした。


聞き覚えのある、声。


「か…金石…。」


恐る恐る後ろを向くと、
すぐ近くに笑顔の金石が立っていた。


「あのウサギ、役に立ったか?」


ニヤッと笑う金石。


沙弥は悟った。


ウサギの言う『時間がない』とは、
『金石が来るまでの時間があまり残っていない』ということだった。


ウサギの言う『別れ』とは、
『金石の攻撃から沙弥をかばって死ぬこと』だった。