言い終わると、
ウサギはなぜか悲しみのこもった目をした。


沙弥もそれにすぐ気付いた。


そして、
嫌な予感がした。


「うさたん………。」


《……さすが、サヤ様。
察したのですね。》


ウサギは後ろ足で立ち上がり、
目の前にしゃがんでいる沙弥の頭にポンと手を置いた。


《…サヤ様。
私があなたに話したいことは、山ほどあるんですよ。

ご両親のこと、
昔のこと、
この世界のこと、
あなたのこと、
金石隼のこと、
『魔王』のこと…。

しかし、
私の口から話すには少し重いのです。

それに…時間もありません。
もうすぐ、あなたとお別れしなくてはいけません。

…あなたには、
これから先、たくさんの困難が待ち受けていることでしょう。

それでもなお、
あなたは諦めず立ち向かう…。

私には、分かります。

あなたは、

『この世界を、
この全てを変える力を持っている。』

だから………。》


涙で前が見えないほど、
沙弥は泣き崩れていた。


そんな沙弥に、


『あなたは強くなる』


最後に耳元でそう呟いたウサギは、


もう、


沙弥の目の前には、


いなかった―――…。