(助かった…!)


そう思った途端、
少女は男から離れるように走っていく。


しかし、
男は全く追おうとしない。


そんな男に違和感を覚えたが、
それよりも、怖い人から逃げられたという安易な安心感の方が勝っていた。


もうだいぶ走っただろうと思い、
後ろを振り返った。


「……!!」


驚きに目を見開く。


男が、
全然遠ざかっていない。


(あんなに走ったのに!
なぜ!)


《私は君を離さない…。
誰にも渡さない。》


男はゆっくりと近づいてくる。


でも、
足がすくんで、動けない。


声も出ない。


ついに、
男が目の前に…。


その瞬間、
少女の体は仰向けになっていた。


「!?」


少女は、状況が飲み込めないでいる。