「い…いや…。」


《大丈夫、私が側にいるから。》


すると、
ぬっと出てきた何かに手を掴まれた。


「…いっ、いや!!
そっちに行きたくない!」


《あっちには、
君の好きなものがあるよ。
だから…私と一緒に来るんだ。》


少女は必死で抵抗するが、
強い力には敵わない。


「やめてっ!
離して!!」


少女の手を掴む『何か』は、
少しずつ実体化していった。


そして、
その男の体も見えるようになった。


黒いスーツに、
少し長めの黒い髪。


後ろ姿しか分からないが、
とても高貴で優雅な雰囲気が漂っている。


と、突然男は立ち止まった。


そして、少女の手を離した。