彼が彼女になった理由(ワケ)

わざわざ、女装なんてキモい真似してきたんだ。

バレたら意味がない。
そう意気込んできたんだから、バレなくて良かったんだろうけど、
「唯子にはバレるだろうな」と自惚れてた自分が、少し恥ずかしくなった……


『聖くん、どこに引っ越したのかわかりますか?』

俺は少し声を高くして、唯子に尋ねる。
少しでも唯子の気を引くため、モジモジと手元を動かしながら……

『特に何も聞いてないので…… あなたは、聖の……?』

ほら来た。
動揺を隠せないだろ?

『少しの間だけど、聖くんと恋人同士でした』

突然消えた、恋人の恋人。

どこの誰で、聖とどう知り合って、どこまで進んだのか。
自分と二股だったんじゃないか。

唯子。
お前は、この謎を無視できるか……?

『そうなんですか。 会えると……いいですね』

って、簡単に流すなよ!
気にしろよ!

気にして……思い出して……
俺に会いに来いよ!!

俺達、遠距離に負けるような、簡単な付き合いじゃなかっただろ?

『じゃあ私、急いでるので』

ペコリと頭を下げ、俺をおいていく唯子。

……あー、そーかよ。
そう来るかよ。

『一緒に探してくださいよ。 聖くんを』

そんなら、意地でも俺を思い出させてやるよ。

『私、聖くんに会えるまで、この街から離れませんから』