彼が彼女になった理由(ワケ)

映画に出てきたのは今どき流行りのイケメン男優。
皆が綾斗に似ていると噂していた人だ。
確かにこうして見ると少し似ている…ような気がする。

主人公より2つ年下で一途で素直な弟役。
少し強引で主人公を揺さぶる1つ年上の兄役。

そりゃ主人公も迷ってしまうはずだ。

私は兄がいいな。
…別に綾斗に似てるからとかじゃないよ?
ただ何となくなんだから…


映画はエンドロールまでで160分。
外に出る頃には辺りが暗くなっていた。

そして賭けの結果は…

『…あんなん有りか?』
『あは、続編とか出そうじゃない?』
『なーんかスッキリしねー!』

どちらにも軍配は上がらなかったのだ。

というのも、主人公は最後までどちらか選べなかったから。
「どっちも大切なの」
まさしく綺麗事で長々とやってきた争奪戦を締めくくってしまった。

自己中心的と言われれば、それまでなんだけど私はそんな主人公を嫌いじゃない。
現実でも大切さに順位はつけられないものなのだから…

『なーんか嬉しそうだなお前… そんなにチョコ渡したくないわけ?』

綾斗は私の顔を覗き込むと、少し不満げに言った。

『そういうわけじゃないけど…ってか綾斗、チョコ嫌いじゃん。』

そんな綾斗に仕返し。
さっきの綾斗に負けないくらい不満たらったらの顔をしてやった。

『食うよ。 夏波のは絶対に…』

ところが予想外の反応。
予測出来てなかった言葉に私は変顔のまま固まってしまってた。

『ぷ… 変な顔。』
『だ、だって、、綾斗が…ッ』

急に変な事言うんだもん…ッ

『らしくねーなぁ、真っ赤な顔でさ!』

クシャクシャっと悪戯(イタズラ)に私の髪を撫でる綾斗。
そんな綾斗に私の顔は熱が篭(コモ)ったように熱かった…