雄治が出て行った後、飲み会の雰囲気は最悪だった。

新に話しかけるものはおらず、何が起こったのか聞こうとするものもいない。


お開きにもならないまま、気まずい空気の中三々五々社員は帰っていった。


「ゆかちゃん、俺たちも出よう」

あたしは山本に言われるまま店の外にでた。

身を切るような夜風がほてった頬に心地よかった。


すぅっとタクシーが止まり、山本があたしを後部座席に押し込もうとした。


「山本さん、趣味悪いっすよ」

後ろから声がした。


缶ビールを手に新が自販機に寄りかかっていた。


「山本さん、手出すならもっと別のオンナのほうがいいっすよ」

「なんだよ、井上。お前には関係ないだろ」

「関係はないっすけど、ダンナもちのオンナで会社の古株ってのは明日からやりづらくなるんじゃないですか?」

「人聞きの悪いこというなよ。俺はただ、西田さんが酔ったみたいだからタクシーに乗せてあげようと思っただけだ」

「それなら別にいいですけど。俺まだ飲み足りないから山本さんもう1軒付き合ってくださいよ」


タクシーの運転手が焦れたように声をかけた。


「乗るの?乗らないの?ドア開けっ放しで寒いんだよ」


新は運転席の窓を覗き込んだ。


「彼女だけ自宅まで送ってやってください」


タクシーは発車した。


後ろを振り向くと新も山本ももうこちらなどは見ていなかった。