「そういえばさ」


雄治が手にしたコーヒーを持ち替えながら言った。



「なんか変なんだよ」

「え?」

「俺、親会社でこの会社を管理する部署にいるんだよ」

「あ・・知ってる」

「新が転勤してきてからさ、あいつ大きいところとか難しいところバンバン落としてきただろ?それが軒並み新人に担当変更しようとしてる」

「さっき部長から話があったけど井上さんのことなの?だけど、それが何?」

「開拓してから1年未満。取引先としては習熟期だ。開拓したヤツが手放すにはまだ早い。」

「それは新人教育とか」

「いや、苦労して取引先になってもらったところ、先方だってド新人に担当変えられて気分いいとも思えない。数字も挙がってるし、担当に固執するなら分かるけどあいつは率先して譲ってる。このままじゃあいつの担当先ほぼ0になる。また転勤ってわけでもないし、あいつ、なに考えてるんだろう?」


雄治が空になった紙コップを握りつぶした。


「ここからは仕事の話。今日もその担当変更のことでここに来た。あいつが担当手放そうとしてることは一部のやつしか知らない。部長は了承したらしいけどなんとか説得して止めさせるつもり」

「雄治さん、それだけでここに来たの?」

「え、なんで?」