「センパーイ、淋しかったあ~」

オフィスに入ると絵里があたしにしなだれかかってきた。

「おはよう。休み中どうだった?何かトラブルは?」

「全然、静かでしたよ。先輩いなくても私意外にきちんとやれました」


意気揚々と報告する絵里の声を聞きながら久しぶりのデスクに座った。

机の上には山積みの書類。

パソコンにはディスプレイが見えないほど付箋が貼られていた。

内容はほとんどがクレーム。

これできちんとできた? あたしはため息をついた。

「先輩、ちょっと感じ変わりました?それ、新作の服ですよね?」

会議室から部長が絵里を呼んだ。

なんだか不機嫌そうだ。

「やばい!部長に呼ばれてたんだ。じゃ後で。じっくり聞きますから」


書類の山を取り崩す。全部に目を通すのに午前中いっぱいかかりそう。


稟議書を読んでいると視線のはしに新が見えた。


すっ、と通り過ぎる。


まるであたしなんかいないように。


「井上さん、おはようございます」

「ああ、おはよっす」

「あの・・」


新はあたしを避けたように見えた。

目も合わせずそのまま自分の席に足早に歩き去った。


絵里が出てくるのと入れ違いに今度はあたしがよばれた。