「西田さんはさあ、普段会社帰ってから何してるの?やっぱりだんなさん待ってごはんつくったり?」

新はあたしの前にビールを持って座り、話し出した。

「そうね、そんなもん」

あたしは新のグラスにビールを注ぎながら答えた。

会社員としての当然の社交辞令だ。

「硬いよね。まじめすぎるって言われない?その硬さとっちゃお、まずはえーっと由香里さんだったよね。下の名前。ゆかちゃんって呼んでいい?」

ビールを返杯しながら新が言った。

あたしも当然の社交辞令として受ける。

「別にいいけど」

「じゃ、ゆかちゃん。俺はゆかちゃんのことかわいいと思っている。ずっと話してみたいと思ってたんだ」

会社で話しかけてくれればいいのに、

そういうと新はビールのグラスの水滴をぬぐいながら言う。

「会社だといつも忙しそうだし、他のヤツラの質問の行列ができてるだろ。こうやって来てくれて話せるなんて俺今日はラッキーかもしれない。俺サシで話したい」

社交辞令ととるには大胆なせりふだった。

そんなことはない、言いかけたあたしに先んじて新は言った。

「いや、まじでかわいいよ。あんまり笑わないところも含めて」

図にのっちゃいけない。


あたしはもう年齢も年齢だし、かわいいといわれる年はもう過ぎた。


花ならもう散っている。

ただ、「会社員」という立場を結婚しても捨てなかったからこうやって若いような気持ちを持っているだけだ。


自分の価値は知っている。

けど・・・・。


酔いがあたしの中の何かをくすぐった