夫のアシスタントの女性がやってきたのは午後1時だった。

「1時間で来る」

その言葉どおりあたしは荷物を用意した。

でも、実際彼女がやってきたのは電話があってからたっぷり3時間もたってからだった。

インターフォンの音が鳴る前、きつい香水の香りが玄関先にいたあたしの鼻についた。

スーツの襟に光る夫の会社の社章。

ほっそりとしたうなじをひけらかすよう長い髪を結い上げていた。

夫のボストンバックを持って出たあたしはグレーのツインニットと黒のタイトスカート。

彼女の視線はきつく、冷ややかだった。


あいさつをしようとするあたしにたった一言。



「時間がありませんから」



そう言った。


あたしは3時間彼女が来るのを待っていた。

ティーポットとケーキの用意をして。

遅れてきたことに彼女からの侘びの言葉はなかった。