2週間の休暇をとることは簡単だった。

休日も出勤するようなワーカホリック気味な社員は姿を消して、
休むのも仕事のうちと考える風潮が浸透してきたから。


絵里は休暇中のあたしの仕事を引き継ぐのに「まかせてください」と自信満々だった。


絵里に悪気がなくても気づかずに放置される仕事は増える。

あたしはやっておく仕事をリストにして絵里に渡した。


「大丈夫ですって。先輩。ご主人と旅行ですか?どこ行くんですか?イタリア、それともハワイ?」


休みといえば海外か。

そうだよね。



矢継ぎ早に投げられる質問をほほえましく思いながらあたしは答えた。



「別になにも」


一瞬、絵里はあたしを哀れむような表情を浮かべた。