美樹の会社を出て空を見上げた。

冬の弱い日差しの中に確かに春の気配がする。

右手にバラを抱えたまま、まだ目立たないお腹に手をあてる。

目も鼻もはっきりしないかもしれないけどあなたはあたしの中にいる。





あたしは心の中で話しかける。


あなたが無事に生まれたら。


大きな白いクリスマスケーキを買おう。


キャンドルに一緒に火を点そう。


いつの日にか熊野古道に行こうね。


そして。


あなたの母親があなたの父親を愛していたと話してあげよう。



あなたの父親がどんなにかっこつけだったか伝えてあげよう。



あたしは笑った。


あふれんばかりの笑顔で。



迷いのない笑顔で。




ーあたしの、進む道はいつも、正しいー




ーFinー