「さすがだね、西田さん。
10時までの資料間に合わせられるのなんて君くらいだよ。
会議が終わったら人事面談だから時間空けてくれ」


部長はきっちりとそろえられた資料を抱えて会議室へ向かっていった。

さて、と。

次は昨日までの営業日誌の整理。


一番上に新の日誌があった。

「井筒商事 伊勢 20000万 A見込」

「Kオフィス 紀伊 30000万 成約」

仕事は熱心にやっているんだね。

苦手なコーヒー飲みながら。

独特のカギざきの文字が並んで、あたしはそっとその上に指を這わせた。

丹念に日誌の内容をデータ化していく。

営業が苦労して開拓した営業先のそれぞれの物語も会社の中ではひとつのデータとしてしか記されない。


昨日のことも彼の中ではこうやってデータとしてのオンナの遍歴でしかないんだろうか。



たくさんの物語の中のひとつの項目として含まれて。