「今、帰り?」

振り向いたらあたしの前に新がいた。

あたしは普段会社でも話さなくてまじめ一本で通っていて声かけられるなんて仕事上のことだけで。

仕事してるあたしじゃないあたしに声をかけるオトコなんてこれまでいなかった。

こうやってしのつく雨の振る夕方なんてとっとと帰ってホットココアでも飲むに限る、そんな日だった。

「あたし?あ、今日は暇だったし部長もいないから早く帰れるかとおもってあの仕事は明日でもいっかとおもって出てきちゃったの」


新がくすりと笑った。


「何、テンパってるの?」