また、朝がやってきた。

「西田さん、例の会議10時から。資料それまでね」

山になっている書類。

これを仕分けして時間までに片付ける。

いつもどおりだ。何も変わらない。

「おはよおございます。先輩。はい、コーヒー」

絵里がいつもと同じようにコーヒーを入れてくれた。

「いつも、クールですよねえ。
先輩。昨日あれからどうしました?
新ちゃん、おとなしく家に送ってくれました?
あたし、あれから雄治さんともう一軒いったんですよ」

あれから?

お開きになったのは夜11時くらいだった。

それからもう一軒、絵里は終電に間に合ったのだろうか。

「新のことだからあっさり先輩、落としてたりして。
うそうそ、冗談ですよ。先輩がそんな軽はずみなことするわけないですよね」

「絵里ちゃん。仕事。これ10時までだから」

部長が持ってきた資料を絵里に手渡そうとした。

でも絵里は受け取ろうとしなかった。

「話、そらしました?じっくり聞きたいからランチ楽しみにしてますね」

10時までの仕事の依頼をしたのに絵里は気にもせず男性社員たちにコーヒーを配り歩く。

ま、いっか。

いつものことだ。

彼女は職場の華、仕事をするタイプじゃない。

ホワイトボードをチェックした。

社員それぞれの一日が乱雑に書かれている。

ここを誰が見ても一目瞭然となるよう整理するのもあたしの仕事だ。

「井上」その名札が少しゆがんで黒く汚れていた。

今日の新は直行直帰だ。顔をあわせることはない。

もし、顔をあわせたら謝らなければならないだろう。



いつもと違う自分を見せたことを。