「ゆかちゃん、井上がいなくなってやばいんじゃないの?」

山本がなれなれしくあたしに話しかけてくる。

「俺がゆかちゃんをなぐさめてあげるよ。今日クリスマスだし、うちも女房と子どもへのサービスは昨日済んだからさあ」

不愉快だった。

山本はあたしが欲しいんじゃなくて、落としたオンナの数を増やしたいだけ。

わかりきってはいたけど、オスの行動のようで。


「山本さん」

「なあに、ゆかちゃん」

「今回の件は誰も処分に疑問を持たないんですか?」

「そんなこといったってさ、朝、部長が奥野さんから話を聞いて泡食って井上に電話してたんだぜ。でも、あいつ携帯解約したらしくってさ、連絡も取れないんだよ」

「今、井上さんがどこにいるかわからないんですか?」

「まあね、処分は親会社から出てるから親会社の連中はどこいったか知ってるかもしれないけどね。俺たち兵隊には関係ないことさ」

「関係ないって、うちの会社のことじゃないですか!」

「そう細かいこと気にするなって、今回は井上くんがうっかりエロサイトでも覗いて入り込まれちゃったんだよ。で、ちょっと頭冷やしたら戻ってくるって」

「そんなこといったって、携帯も通じないのはちょっと異常だと思う」

「いやに井上のこと気にするよね。ま、いいけどさ。ここに戻ってくるかどうかはわかんないけどどっか関連会社か別部署か、とにかくほとぼりがさめたら転勤して転勤と同時に今と同じ主任待遇になるさ」

山本は余計なひとことを口にした。

「俺たちはオトコだから。なんだかんだで会社が守ってくれるよ」