あたしはタクシーの中にいた。

夫が風呂に入っているときにでてきたから夫はまだあたしがいなくなったことにきづかないだろう。

鼻歌まじりのシャワーの音にまぎれるように玄関の鍵を閉めたから。

窓から見る景色は赤と緑のイルミネーションとキラキラと輝くネオンサインに彩られて、とても美しかった。



この輝きは人間の思惑も醜さも身勝手ささえもも覆い隠してしまう。


サンタクロースもこんな時間は子どもたちにプレゼントを配りに行ってしまったらしくてもうどこにもいなかった。



タクシーは走る。



夜のしじまを。



傾きかけた月の光の下を。





気づいたらあたしは会社の前で真っ暗なオフィスの自分の席にいた。