嫌い・・・



新が何を言ったとかそういう内容よりただ新の口から発せられた「嫌い」という一言があたしの心臓に楔を打ち込んだ。

「ごめん。ゆかちゃんが、ってわけじゃないんだ。一般論。あー、それもなんか違うな。俺の持論、あくまでも。気にすんなよ」

新は残りのビールをまた一気に飲み干した。

「あー、俺テンパってんな。雄治さんたちつくまえに2杯も空けちゃった」

おどけたようにそういう新のことばにあたしはほっとした。

「テンパるのはあたしの専売特許なのに。井上さん、気にしないで」

あたしも残りのビールを一気に飲み干した。少しムリしながら。

取り上げられたベンジャミンはあたしの手から離れて新の前にあった。

あたしは手入れしていないネイルを見られないように手をひざにおいた。

新は空のグラスを上げて3杯目のビールを注文した。