ココアブラウン

どんなに一生懸命さばいても次から次へと運び込まれるファイルの山は一向に減らなくてあたしは食事を取る気にもなれなかった。

それにしても。

絵里の切り替えの早さについていけない。パンクしそうな業務なのに絵里はずっと涼しい顔だ。今日一日の分も終わってなさそうなのに。

言っても言ってもか・・・。

ーこれだけの量をこなせって。風車と戦うドンキホーテみたいなものなのかなー

絵里がやろうがやるまいが今日の分は必ず今日のうちに終わらせなければならない。
あたしは黙々とファイルに向かった。

昼休みも半分以上過ぎてファイルの山の3分の1が減っていた。

あたしはひとつ伸びをして昼食にでる準備をした。

あたしが立ち上がったのを見てファイルの山がどさりと運び込まれた。

山本だ。

「ゆかちゃん、大変だね。一人で」

「仕事ですから」

「今日、終わったらメシでも食いに行かない?」

「終わらないと思います」

「冷たいな、井上とはメシ行ったんだろ?」

一瞬、手が止まった。その拍子にファイルの山はどさりと崩れた。

「なんで、そんなこと知ってるんですか」

山本はニヤニヤと笑っていた。

「カマかけただけだよ。ふーん、そうか井上とメシいったんだ。ダンナさんはそれ知ってるわけ」

山本の笑顔ともいえない表情に気色悪くてあたしは黙っていた。

「じゃ、終わったら連絡してよ」

山本はスーツのジャケットを担いであたしの席を去っていった。