「タクシー代?ちょっと待って」 マサキさんは寝癖を直す手を止めて、羽織ったばかりスーツのジャケットから財布を取り出した。 そして千円を取り出して私のてのひらに乗せた。 「足りないよ」 「え?いくらだい?」 「わかんないけど、千円じゃ足りない。だって遠いもん」 マサキさんは悩んでいたけど、結局私の手の上に五千円札を乗せた。 優しいんだね。寝てる間に一万円貰ったのに。 「じゃ、俺は行くよ!」 マサキさんは寝癖をいじりながら、早足で去っていく。