「湊ちゃん」

「人前でその呼び方はやめてくれと言ってるだろう」

言いながら近づいてくるのは、
紛れもない弓倉本人。

高志の前につっと立ち、
自分以外の女に頭を撫でられる高志をふっと見下ろす。

高志にだけ分かる作った無表情で、
形式的に女性に、
意味的には高志に向かって口を開く。

「で、この少年は誰だ?咲木」
「…………(先生?)」
「…………(黙っていろ)」

高志と弓倉の間で交される無言の会話。

「えっと、知らない子」
「そうか、知らない少年だな」

ひとつ頷く弓倉。