そんな出会と騒動からしばらく。


高志は、毎度時間割りに従ってやってくる理化の授業を受けていた。

高志にとってかなり複雑な時間であった。

担当は弓倉。

教室で教科書片手に立つ姿は一般生徒の目に凛々しい女教師だが、

高志にとっては冗談でも口外できない想い人。

もちろん普段隠れるようにしか会えず、
また会えない日が続くことも多いので、

近くで顔が見れるのは嬉しい。

嬉しいが、
そう熱のこもった目で見つめるわけにもいかず、

かと言って授業を受ける生徒である以上、顔を全く見ないでいるわけにもいかない。

高志は席に縛り付けられたまま、

ごく普通の生徒のふりをして落ちつかない時間を過ごすことになる。