「ちょっと気づいてもらえなかっただけでしょう?そんなになるまで落ち込んでどうするのよ。また明日会いに行けばいいじゃない」

「そうだけど」

私は、咳き込んだはずみで出た涙を指でぬぐう。

今日は黙ったまますれ違われたけど、
明日はちゃんと声をかけて呼びとめればいい。

だけど。

「ああ~、やっぱダメ~」
「なんでよ?」

「声かけてみて、完全に忘れられてたらもう立ち直れない」

あの高志君の顔が緊張に震える私を見て、『誰?』と首を傾げられたら。

考えるだけで恐怖いっぱい。