雲一つない空。
生ぬるい風。
フェンスを殴りつける裕。
うっすらと濡れた瞳。
「やっぱここにおってん。」
後姿に声をかけるすばる。
「気にするなや。さっきのこと。」
裕の肩へと手をかける信五。
「信五。わりぃが左側にくるんはやめてくれひんか。」
フェンスの向こうを見つめたままの裕。
「お前、まさか…。」
驚いた表情のすばると信五。
「…ついに見えんくなってもうたわ…。こんな綺麗な空なんに…俺の左目にはもう何も映
ることもないねん…。」
俯いたままもう一度フェンスを殴りつける裕。
「…裕…。」
かける言葉のみつからないも信五。
ドアに向かい走り出すすばる。
「何処行くねん。」
後姿に問いかける信五。
「ちょっと行ってくるわ。」
振り向くすばる。
「行くって何処や。まさか…。」
「…。」
信五の問いかけに答えないすばる。
「すばる。やめてくれ。」
すばるを止める裕。
「安心しいや。俺も光一さんから学んでるねん。裕の考えてることはしいひんよ。意味の
ない喧嘩はしいへんから。」
屋上を後にするすばる。
黙ってその後ろ姿を見送る裕と信五。