彩がそんなに数学が苦手だなんて、聞いたことがなかった。 でも、得意だとも聞いたことがなかった。 「いくら文系って言ってもね、私が行きたい大学は全教科いるの。いくら英語や国語ができても、数学一つできないだけで、もう通じないの」 普通、苦手科目は得意な科目である程度カバーできるけれど、彩が目指す大学はそんなに甘くないようだった。 壁にもたれ、私に寄り添って話す彩は、いつもの冷静で強い彩ではなかった。 真剣だから、弱いんだ。 真剣だから、怖いんだ。 それは、あたしも同じだった。