昼間には少し暑いくらいの、二階の南側にある彩の部屋に、窓から心地よい風が吹き込む。

その風が、細く柔らかい彩の髪をさらさらと揺らす。

肩より少し長いくらいの髪は、真面目な彩にはお似合いの、混じり気のない黒色だ。

染めてもいないのに褐色がかった私の髪は、日に当たればオレンジ色にさえ見える。


髪と同じように黒い、愛らしい瞳を私に向けて、彩は言う。

「私はやっぱり、司沙には音楽続けてほしいな。夢を追うってカッコいいじゃん!私、応援してるよ」

「うん…でも、親は大学行けって言うから…」

「そっかあ…。でも私、司沙なら絶対いいアーティストになれると思うんだけどな」


私の歌を聞いたこともないのに、自信を持ってそう言い張る彩には、いつも不思議と癒されるのだった。



「お勉強、進んでる?」