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キ…ンッ

剣と剣がぶつかり合う音。
その直後、ドサリと何かが落ちるような音がする。

それは一人の若い兵士が、競り合いに負けて尻餅をついた音だった。

兵士と剣を交えていた相手の剣の切っ先が、兵士の額すれすれに光った。

「これで君は一度死んだぞ」

凛とした声が響く。
輝くような美しい金髪の持ち主は、静かに剣を鞘に納めた。

「リアトレーゼン様、自分もご教授願います!」

次々と、周りで見ていた若い兵士たちが名乗りをあげる。

その誰もが国一番の瞬速の剣の使い手と言われる王女の護衛に相手にされたくて必死だ。

リアはその中から適当に一人を選んで、再び剣を交え始めた。



そんな中庭の様子を、王女は自室から憮然とした表情で見下ろしていた。

「姫様……?」

メイドが、不思議そうな表情でエリザベスを見つめた。

「ねぇ、あなたは女の幸せって何だと思われます?」

エリザベスは、目線をリアに向けたままメイドに尋ねた。

メイドは少し考えてから、
「やはり好きな男性と一生を添い遂げることだと思いますわ」

と、頷きながら続けた。

「そうね……私もそう思いますわ……」

思い詰めたように呟いたエリザベスに、メイドは困った顔をする。

「姫様?何をお悩みですか?姫様にはあんなに素敵なリアトレーゼン様がお側にいらっしゃいますのに」

その言葉に、エリザベスははっとして、笑顔を取り繕った。

「悩みなんてないですわ。それより、お茶にいたしましょう」

メイドはその言葉に、お茶の準備をするためにきびきびと下がっていった。

エリザベスが、もう一度中庭を見て

「あなたは幸せなのですか……?リア……」

誰にも聞こえないように、呟いた。