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テラスに出て、リアは一人ため息をついた。
思った以上の疲労と満足感がリアを襲っていた。
夜に揺れる海を見つめる。月はもう傾き始めていた。
それはリアに王宮のことを思い出させた。

そろそろ、帰らなければならない。

その時、飲み物を持ったゼンがやって来た。
ワインをリアに手渡す。

「ここには俺たちしか来ないから、仮面は取っても大丈夫だぜ」

確かにそこは小さなテラスなので、リアとゼンの二人が談笑出来る程度の大きさだった。

リアはそっと仮面を外して、ワインに口を付けた。

ゼンは月明かりに照らされたリアを、ぼんやりと眺めていた。
キラキラと輝く金髪が眩しかった。

「ゼン」

初めて呼ばれた自分の名前にドキンと胸が弾む。

「今日は、連れてきてくれてありがとう」

美しい少女が、微笑む。
少し照れたように、しかししっかりとこちらを向いて。

「凄く楽しかった。こんなに楽しかったのは数年ぶりだったよ」

少し切なそうに目を細める少女を、無意識に抱き締めていた。