数年ぶりのステップを、リアの体は覚えていたようで、ゼンの足を踏みつけることはなかった。
さらにゼンのリードはとても繊細で、リアはまるで自分が今どこかの貴族の青年と踊っているかのような錯覚を覚えた。

「上手いじゃないか」

ゼンが愉快そうに言った。耳元近くで響く声が、いちいちリアの心を乱す。

「……あなたこそ……」

女言葉で答えるには自分にはそれが精一杯で、代わりにリアはゼンの目を見て微笑んだ。

ゼンは少しの間のあと、

「今の顔は仮面なしで見たかったな……」

と呟いた。
恥ずかしくなってリアは、慌てて俯く。

「……それじゃ、少し僕も本気を見せてあげましょうか」

グイと、腰に力が込められた。リアは驚いて、慌ててステップについていく。

それは先程の繊細なものとは違う、激しくて情熱的なリードだった。

「セ……セラフィー!」

「リーシャ、少し激しすぎる?」

ゼンがいたずらっぽく聞く。
その言葉に、リアはムキになって返した。

「……そんなことありませんわっ」

ゼンがクスッと笑うと、2人は難解なステップを踏みながら、ホール中央に向かっていった。