意外にも早く足が地面について、リアは体制を崩す。
ぼすっとゼンに抱き抱えられて、なんとか転ばずにすんだ。

「大丈夫かよ?」

「あ、ああ……」

ゼンの胸をおしてさりげなく離れる。心なしか残念そうにしながらゼンが言った。

「暗いから、足元には気を付けろよ」

通路は薄暗く、どこかから冷たい風が吹いてくる。
ゼンの持つ灯りを頼りに歩くしかなく、リアは慣れないドレスのせいで何度も転びそうになった。


「……やはりドレスは歩きにくいな」

「そうか?じゃあ、ほら」

手を差し出され、とっさに何がしたいのかわからず、リアは首をかしげた。

「手、繋いだほうが安全だろ?」

リアがためらっていると、ゼンはひとつため息をついて、無理やり手を引き寄せて繋いだ。

ロンググローブを履いているせいで直接手がふれあうことはなかったので、リアは少しほっとした。

(剣を扱う私の手は女性らしさには欠けるのだろうな……)

そして、自分の手をひきながら、前を歩く背中を見つめ、リアは

(もう二度と男と手を繋ぐことなどないかもしれない……)

と、ぼんやりと思うのであった。