「ところで……まさか、門から堂々と出て行くつもりではないだろうな?」

リアが、ショールを気にしながらゼンに聞いた。
ゼンは、ニヤリと笑って、リアに答えた。

「まぁ、ついてこいよ」

リアとゼンはドレッシングルームから、寝室に向かった。ゼンが、置かれている大きな時計の針を左右に
何度か回す。

すると、音もなく時計は横にずれ、人一人通れるほどの穴が現れた。

「隠し通路……?」

「驚いたか?」

「毎晩こうやって忍びこんでいたわけか……何故貴様がこんな事を知っているんだ!?」

ゼンはへらっと笑って、口元に指をあてた。
その仕草にリアは、無性に腹が立った。

「貴様、本当に何者なんだ」
「ただの海賊の頭だよ。さ、行こうぜ」

ひょいと身軽に、ゼンが穴に落ちていった。
リアもドレスの裾とショールを気にしながら、穴に飛び込んだ。