再び灯りが点いた時、会場の貴族たちは皆壁際に追いやられていた。

ホールには、先ほどまではいなかった剣を持つ、軽装の男たちが十数人いた。
その中の一人、片目に眼帯をした、30代ほどの男が、大きくはないが、よく通る落ち着いた声で言った。

「ご機嫌よう、貴族の皆様。この辺り一帯を取り仕切る者です。頂くものを頂ければ、危害は加えませんので、どうぞ紳士に似合わず、暴れたてられませんよう」

つまり、自分たちは海賊だから金目の物を寄越せ、抵抗するなということだ。

「姫。外に王家の船が隠れているはずです」
囁くリアに、エリザベスは首を振った。

「民をおいて私1人で逃げるわけにはまいりません」

「……わかりました。しかし、姫、万一の時は」

「……ええ」

リアは、エリザベスがそう返事をしたのを確認し、
そして、凜として言った。

「いくら海賊でも、王族に対する無礼が過ぎるのではないか?」

そして、一歩前に出る。

海賊たちが、訝しげにリアを見つめる。

「この船に、エリザベス様が乗っていると知ってのことならば、海賊というのは、恥知らずの愚か者の集まりのようだな」

リアの言葉に、海賊たちが顔を見合わせる。

「というと、そちらのお嬢様が王女様か」
「とすると、あんたか、あの有名なリアトレーゼン公は」

海賊たちが少しざわつく。

先ほどの男が、「静かにしやがれ!」と凄みのある声をかけると、すぐに静まった。

「……へぇ、これが噂の。しかしこんな女みてぇなひょろひょろが、あのリアトレーゼンなのかよ?」

海賊のひとりが、リアに近づき、しげしげと眺めた。

「おい、やめろニコ」