2人の乳母の家では、優しそうな初老の女性が迎えてくれた。

その家についた後、リアトレーゼンは、妹に何か言って、出て行った。

少女は、自らキリアの腕の消毒を行ってくれた。無言で治療をされている間、少女は思いつめたように真剣にキリアを看ていた。

「貴族なんて、みんな俺のことなんてゴミくらいにしか思ってないかと思ってた」

ぽつりと呟いた言葉に、少女は目を伏せたままで呟いた。

「私たちの母様は貴族の人じゃないの」

「そうなのか……」

「うん。でも、沢山の人に虐められて、母様はご病気になって死んじゃった」

貴族じゃないから、虐められたのか、とキリアは胸が苦しくなった。だから貴族なんて嫌いだ、と強く思った。

「でも、約束する」

包帯をギュッと結び終えて、少女は強い眼差しで言い放った。

「私や、エリザベス様が、そして誰より兄様が、きっとこの王国を変えてみせる。誰もが平等な国に、私たちがしてみせる」

キリアには、少女の強く光る眼が眩しかった。それほどまでに少女の意思は強く、キリアは少女を信じてみたくなった。

「……信じてる……」

にっと、キリアは微笑んだ。認められたのが嬉しいのか、少女もキラキラと目を輝かせて、大きく頷いた。