「兄様!灯りも持たずに行かれたと父様が心配しておられました!」

元気に駆けてきた、まだ幼い、キリアと同じくらいの年の少女は、リアトレーゼンと同じく美しい金髪に、とても整った顔をした少女だった。

あら?とキリアを見て、少女は微笑んだ。その微笑みに、キリアは内心ドキリとする。

「兄様のお友達?」

こんなボロボロの服を着た自分と、高貴な服装の兄を見比べ、何故友達だと思うのか。

「こら、夜道を1人で来ては危ないだろう」
「剣を持って来ましたもの!」

「相変わらずお転婆だね、キミは」

こつんと、リアトレーゼンは妹の額を小突いた。少女は、ぷうと頬を膨らませて、

「その辺の方には負けませんわ!私も、将来兄様と一緒に王女を守るのですから!」

「全く、小鳥さんはいつ羽を閉まって、恋を覚えてくれるのかな」

クスクスと、年相応の笑顔で、リアトレーゼンは笑った。
貴族もこんな会話をするのか、とキリアは二人を見つめる。

「あっ、あなた!」

少女の視線が、ふいに自分に向けられた。

「怪我をしているじゃない!」

そして腕をとって、キリアを見つめる。汚れている自分に触れることなど、気にもとめていないようだ。

「近くに乳母の家があるの!手当てしてあげるからいらっしゃい」

そう言って、キリアの腕をひく。
リアトレーゼンは、そんな2人をクスクスと眺めた。