「ええ!まぁ、路上で生活してたんですけどね……」

言いずらそうに、キリアは返した。

「スリとか、窃盗とかばっかりしてたオレでも、リアトレーゼン公には少しだけ憧れました」

「へぇ……」

「確かあの人、15の時にはもう既に城で一番強かったらしくて、王女と結婚するのが決まってるとかいう噂もあるくらい王女と相思相愛でいらして……」

うっとりと、キリアは噛み締めるように言葉を紡ぐ。

「お前、貴族嫌いじゃなかったか?」

「ええ、貴族なんて大嫌いですけど、あの人はオレみたいな奴にも優しかったんです……」

しばらく目を瞑って、そのあとキリアは、申し訳なさそうな表情になった。

「すみません、海賊が貴族に憧れるなんて、おかしいですよね。もちろん、一番尊敬しているのはお頭や、この船の仲間達ですけど」

「そんな事は別に構わねぇよ。それより、詳しく聞かせろよ、その話」

「え、はい……あれはオレがまだガキだった頃ですけど……」

ゼンは真剣に、キリアの話に耳を傾けた。