だけどまだだ……。
まだ彼女は自分の物にはならない。

それがわかっているから、ゼンは抱きしめたい気持ちを拳を握りしめて押しつぶした。

「なぁ、明日、このドレス着て出掛けないか?」

ゼンの提案に、リアは瞳を大きく見開いて驚いたが、やがて静かに首を振った。

「それは出来ない……女の装いで外に出るなんて、一生出来やしない」

それを聞いて、ゼンは予想していたとばかりに笑った。

「勿論、アンタだってバレないようにするよ」

「……?」

リアは小首を傾げる。

「絶対バレないようにする。明日、迎えに来るからな」

「……っ……でも……」

「断ったらここでキスするぞ」

「なっ!?」

顔を真っ赤にして、リアは後ずさりした。
からかうように、ゼンはゆっくり近付いて来て、リアの肩を引き寄せる。

「10数えるうちに決めろ」

「そんな無茶な……っ」

「10……9……」

「……ぅ……」