「なんだ、それは」


リアが目を丸くする。
ゼンが持ってきたのは、大きな鞄だった。
いつも手ぶらで来ていたゼンだけに、その中身が気になった。

「あんたにプレゼント」

ゼンがいたずらっぽく笑った。

鞄を開けると、そこには美しい青のドレスと、それに合わせた靴や装飾品が入っていた。

目を丸くして驚くリアに、ゼンは得意げな顔をした。

「着てみてくれよ」

「でっ……出来ない……」

「どうして?」

「だって、私は男で……」

「女だろ」

「……女の装いなんて、もう随分してないんだ」

勘弁して欲しいと、ゼンを見つめても、ゼンも強くこちらを見つめた。

「頼む。少し着るだけでいい。あんたのために仕立てたんだ」

自分がどこかでこれを着ることなんて、出来やしないのに。
わざわざ仕立てたのか、この男は……。
と半ば呆れてゼンを見つめた。

「お願いだ……あんたが着てくれないとこのドレスも報われねぇだろ」

「……少しだけなら……」

「ああ!かまわない!」

ぱっと嬉しそうな表情をしたゼンを見て、リアはため息をついた。