真っ直ぐな瞳に、思わず心が揺らぎそうになる。落ち着け、いくら紳士の振る舞いをしようと、相手は海賊。
騙されては、いけない。
心を乱されては、いけないのだ。


何より私を男にさせているのは、
父なのだから……。
この男が何をしようが、抗えるはずなどないのだ。

「なに笑ってやがる」

「貴様は本当に馬鹿だな」

微笑みながらゼンを見つめると、ゼンは顔を赤らめた。

「無理に私を女扱いしようとするな。お前には何の徳もないぞ。他にいるだろう。普通の、美しい娘が」

毎晩、危険を犯してまで、会いに来る価値が自分にあるとは思えなかった。

この青年は、海賊などをしていても、気のいい男だ。彼を好きになる娘は、探さずとも現れるだろう。

「あんた……そんな風に笑えば、誰も男だなんて思わねぇよ」

ドレスで着飾っていなくても、内面から滲み出る美しさは、他の娘には真似できない。他のどんな娘よりも十分に、魅力的だ。

ゼンは、リアを一目見た時から、その魅力に気付いていたのだ。