「リアトレーゼン」

「はっ……」

突然こちらに視線を向けられ、リアは背筋を伸ばす。
娘の自分でさえ、父のこの厳格そうな瞳は苦手だ。
家臣や従者たちにこれが向けられれば、恐らくそれだけで恐怖を覚えるだろう。

「昨夜はご苦労だったな。あの夜会に出席した多くの貴族から、お前の活躍が称えられていたぞ」

「いえ、私は王女をお守りしただけですので」

「国民の期待もお前に集まっている。今後もそれを自覚して行動するように」

男としての自分に、期待が集まっている。
そう、王女との結婚を望まれるのも、その期待のおかげである。
その期待は、父が望んだものだ。
だから自分は……それに従うしかない。

「わかりました……父上」

そう言ってリアは、口元だけで笑った。