ドクドクと心臓が鳴る。
もう辺りは寒いのに、
いやな汗が背中を伝った。
「え・・・・・・?」
「だって言ってたでしょ?」
「言った、けど・・・・・」
「教えて? 知りたい」
じっと俺の姿を捉えた瞳。
そらされることのないその瞳に、
思わず逃げ出したくなる。
はぐらかそうにも、
うまい言い訳が思い付かない。
ぐっと息を飲み込んで、
「もう、いない。
好きじゃなくなったんだよ、“そいつ”は」
柊に言いながら、
どこかでまだしつこく叫ぶ自分の胸にも言い聞かす。
「じゃあ、また明日・・・・・」
柊の返事も聞かず、
そこから逃げるように俺は歩き出した。

